当時の知識人のナマな生態がわかる『日東壮遊歌』 その1

Amazonの中古で長らく高値がついていたこの本。復刊しているようで、どの書店にも在庫たっぷりです!狙っていた方はぜひどうぞ。

【楽天ブックスならいつでも送料無料】日東壮遊歌 [ 金仁謙 ]

日東壮遊歌 [ 金仁謙 ]
価格:3,348円(税込、送料込)

『日東壮遊歌 ハングルでつづる朝鮮通信使の記録』は、江戸時代(李氏朝鮮では英祖時代)に朝鮮通信使一行の書記として来日したキム・インギョム(金仁謙)による道中の記録です。ネットでは、豊かな日本の町を見て恨みつらみを記した部分が注目されています。その情報どおり、「恨めしい」やら「悔しい」やらといった妬みの心情がうかがえる部分もありました。

しかし全編を通じてそのようなノリかというとそうではなく、当時の李氏朝鮮の知識階級にあった人の思いや行動がリアルに伝わってきた点のほうが私にはおもしろかったです。また、江戸時代の日本については、ソウルはおろか北京よりも繁栄している町のようすや、“趙飛燕”よりも美しい女人たちを素直に称賛しています(&恨みつらみ付き)。一方で、「あら・・・(汗)、昔だったしそういうこともありますよね」と頭ポリポリしたくなるような日本の描写もあり、いろんな意味で正直な筆だなと感じました。

巻末の解説によると、著者のキム・インギョムは科挙の司馬試に合格し、通信使の書記を務めた後に県監となり、没しました。彼にとっては曽祖父の養父が忠臣として知られるキム・サンホン(金尚憲)だったことがプライドの礎(キム・サンホンが登場するあらすじはたとえばこれ)。ですが祖父が庶子だったため、祖父の嫡出の兄である寿興や寿恒が領議政にまでのぼったことに比べると、書記や県監はイマイチな官職でした。通信使の書記というのは庶孽から選ばれる臨時の官職だそうです。

親族が領議政?ってことはドラマに出てきているんじゃ?と思いあたり、これまでのあらずじを検索したところ、張禧嬪(チャンヒビン)の時代のドラマに禧嬪と敵対する老論派として登場しています。たとえば、「張禧嬪」や「妖婦張禧嬪」のこの話この話に出てくるキム・スフンやキム・スハンが、著者の一族にあたるのではないでしょうか。なんと、貴人キム氏の家門ですよ!そうとわかるとワクワク度も倍増しちゃいますよね。

スポンサード リンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする