『朝鮮王朝実録』
著者:朴永圭/尹淑姫/神田聡 出版社:新潮社
なんと!2012年3月1日に実録の改訂版がやっと出版されました!
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<以下の記事は2012年3月1日より前に書いたものです>
日本で発刊されたのは1997年。すでに絶版で今や幻の入手困難本と化しています。韓国時代劇ドラマの人気の高まりも原因なのか、驚くほどの高価格。出せば売れるのは確実なのになぜ復刊されないのか不思議です。大人の事情があるのでしょうか。淡い期待を抱いて長らく待機していましたが、しびれを切らし、定価以上の金額で泣く泣く購入しました。気分的には近年で一番の清水ショッピングです。それでも私が購入したときは1万円ほどだったのに、本日(2011/10/18)時点では25,467円のビックリ価格!ちょっと高すぎますよね。所蔵している図書館も多いようなので、どうしても読みたい方は図書館のご利用もご検討ください。
韓国ドラマでは、王様と大臣の会議のそばでつねに書き取っている役人(学者・史官)がいますね。彼らが記録した内容が、『朝鮮王朝実録』のもととなる『承政院日記』。会議の記録はもとより、王がどこでどんな行動をしてどんな会話を交わしたかが記されているほか、その日の天気まで詳細に記されていることから、歴史的価値が非常に高いそうです。また上訴文などの情報も書き写されています。この『承政院日記』をはじめとするさまざまな資料から抽出した情報を編纂したのが『朝鮮王朝実録』。ドラマで大きな政変が起こったり重要人物が亡くなったりしたときなどにナレーションおじさまが話す「『実録』では~・・・」がこれにあたります。
『朝鮮王朝実録』製作の流れとしては、新しく即位した王が前王時代の『実録』編纂を命令→各王ごとに『実録』が完成→結果的に合計2000巻近くにおよぶ歴史書として大成、となります。その作成に王がタッチすることはできません。たしかドラマ「女人天下」で中宗が「余のことがどのように記されるかと思うと怖い」とこぼすシーンがあったのは、そういう事情を指しているのでしょう。原文は漢文。当然ながら多くの歴史ドラマが『実録』に基づいてつくられており、ナレーションから判断すると「史実とされているかどうか」の基準も『実録』なのだろうと思われます。政変で王が変わったときなどには時の権力者による編纂への介入もあったようで、下書きと清書がちがうじゃーん!といった事実も発見されているようです。
ここで紹介している日本語版の『朝鮮王朝実録』は、膨大な原文のダイジェスト版(といっても原本がすごいボリュームなのでダイジェストとはいえわりと分厚い本です)。各王ごとに、功績や出来事などの治世について、王の家族(主に王妃と大君)、その時代に頭角を現した有名人などがまとめられています。客観的かつ簡潔で、非常にわかりやすく読みやすい。ドラマでの出来事が本当にその通りだったのか、実は別のニュアンスがあったのかもだいたいわかります。「その王が何をしたか、その王の時代に何が起こったか」という良質な情報をパパっと得るなら『朝鮮王朝実録』が一番です。
ただし王妃や後宮についてのまとめはあっさりめ。特に側室は全員が記されているわけではなく、歴史的な大事件に関わってない場合は名前すら出てきません。ですので後宮についてはドラマのほうがより詳細(で楽しい)です。個人的にはもう少し詳細な日本語版が出版されるのを熱望しています。