王妃や世子嬪を選ぶ揀擇(カンテク)の流れ

韓国歴史ドラマを見ているとだいたい一度は出てくる「揀擇(カンテク)」エピソード。王妃(または世子妃)を選ぶオーディションみたいなものですね。ドラマによって演出がさまざまで、えーそんなにカジュアルでいいの?みたいなシーンから、王族ご一同様が御簾ごしに娘たちを観察して質問するといった光景もあります。揀擇が一次・二次と進んでいくため、その段階によって演出が違うのかもしれません(またはテキトーという可能性もあり)。政治的事情によって当確ありきだったこともあるようですね。今回はそんな揀擇についてまとめてみました。

★嘉礼都監と禁婚令

世子が適齢期を迎えたり、王が妃を迎える必要があるときには、臨時の官庁である嘉礼都監(カレドガム)が設置され、国中に禁婚令が出されます。禁婚令の対象になるのは9~13歳(13~16歳や17歳までといった記述もあり一定しませんが、世子嬪と王妃とで対象年齢が異なるからのようです。世子嬪の場合は世子より少し年上、王妃の場合は15歳前後らしい)の、両班家の娘のみ。側妻の子や、父が亡くなっている場合は対象外。王族や側室の家門も除外されます。もちろん後家もダメ。そんなことは言われなくてもありえなさそうに思えるのですが、「内侍の娘もNG」という説明がドラマ「妖婦張禧嬪」で流れました。

★処女単子の提出

ドラマ「王朝の暁」で王妃選びの際に四柱単子(サジュタンジャ)という言葉が出てきましたが、当時は四柱推命が重要視されていました。適齢期の娘をもつ全国の両班家は、娘の四柱が書かれた四柱単子と父やその先祖の経歴書からなる「処女単子(チョニョタンジャ)」と呼ばれる身上書のような応募書類を提出します。ところがここで問題発生。揀擇に参加すると女官になった(=王と結婚した)とみなされるため、落選しても他の男性とは結婚できません。一生独身で過ごすか、三揀擇まで到達すれば側室となったようです。王妃になれたとしても外戚である実家に災いが及ぶこともあります。ということで、多くの名家は揀擇参加を拒み、娘をどこかの両班息子と急いで婚約させたり、娘の存在を隠したりしました。反面、没落両班にとっては復活のチャンス?だったのかもしれません。また、王妃を輩出した家門の出身地は行政の格付けがひとつ上がるという恩恵を受けたそうです。

★初揀擇

書類選考で絞られた20~30名が、お供を伴い宮殿へ。入り口で鉄の釜のフタを踏んでから入ります。この第一次選考の審査員は王族の女性たち。ドラマ「王と妃」では、首陽大君が揀擇を主導していたせいか(本来その役目をする大妃や王妃が不在だったため)男性王族(譲寧大君とか)も加わっていたと記憶しています。女性たちは簾ごしにチェックされ、5~7人程度が合格します。

★再揀擇

再び選考が行われ、3人に絞られます。実際にはこの時点で最後の一人が内々に決まっており、内定者は六人轎に乗り50人の護衛とともに帰宅します。「王と妃」では、再揀擇には議政府も審査に加わるという説明があり、先王の側室や嫁いだ公主も審査していました。落ちた人は希望すれば女官として宮殿に残れるというナレーションもありました。

★三揀擇

形式的にはここで最後の一人が決定しますが、実質的には内定者の最終確認という場のようです。選ばれた一人は実家に戻ることはできず、そのまま別宮で修業生活に突入。数ヶ月にわたり尚宮たちから王妃になるための作法などを教育されます。ドラマ「太陽を抱く月」では世子嬪ヨヌがこの別宮暮らしの間に病に倒れ、ドラマ「女人天下」ではこの教育期間中に文定王后がオム尚宮に宮中側室事情をズバリ切り込んで聞いていましたね。

上記が揀擇の流れになりますが、すべての王妃がこのような正式な手順を経たわけではありません。もともと王位の第一継承者とみなされていない王子がひょんなことから王になった場合は、その配偶者が「府夫人」や「郡夫人」から王妃に昇格します。また、女官から側室を経て王妃になった張禧嬪もしかり。というか、中人階級なので揀擇がおこなわれていたら、そもそも対象外ですね。

その他、「後宮揀擇」というものもあったようなのですが、どれほど厳格な手続きだったのかはよくわかりません。李氏朝鮮時代初期には王妃と同じようにきちんと揀擇していたという記述はあるようです。ドラマ「龍の涙」で、元敬王后に勢力がないことを示したい太宗が手続きを踏ませて側室を選ばせて婚礼を挙げたというエピソードがありましたが、このときは正式な後宮揀擇がなされたのではと思います。「イ・サン」では、世継ぎのいない正祖のために母の恵慶宮(ヘギョングン)ホン氏が側室を探しており、「後宮(フグン)揀擇(カンテク)」という言葉が頻出。礼曹を呼んで後宮揀擇を命じるシーンもありました。

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